【総  説】

廃棄物管理と処理実務の主体――主体をめぐる経緯と課題を雑感風に――

小 林 康 彦*

【要 旨】 廃棄物の適正処理のためには規制に合わせ,処理システムの整備が重要であり,関係者の役割分担と主体の明確化が重要である。そのため,廃棄物を担う主体について,今日までの経緯をまとめ,今後への課題を考察した。一般廃棄物については「汚物掃除法」以来,市町村の業務として取り組まれてきたが,近年,事業者の役割が強調され,また広域的対応のために都道府県の役割強化が必要となっている。産業廃棄物については,排出者責任のもとに企業活動による処理を基本としてきたが,最終処分場の確保が困難になるにつれ公共関与への期待が高まっている。PCB問題および乾電池水銀問題を対象に責任のあり方,処理の主役を検討し,くみとるべき教訓をまとめた。主体不在のため処理が進展しないPCB問題の解決を急ぐべきである。最後に,諸外国で活発な議論がなされている民活・民営について各種の形態を整理し,わが国で議論するための素材を用意した。

キーワード: 役割分担,広域処理,事業者責任,PCB,乾電池水銀問題

廃棄物学会誌,Vol. 8, No.5, pp.380-391, 1997

原稿受付 1997.7.7

* (財)日本環境衛生センター 専務理事

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