複数企業における紙類に着目した環境パフォーマンス評価とその環境監査に関する研究
鄭 桓 ?*・赤 井 裕*・井 山 慶 信*・早 瀬 光 司*
【要 旨】 本研究では,広島市に本・支店を設置している8社の企業を現場の実験系として設定し,「系」と「環境」との理念に基づいた環境パフォーマンス評価とその環境監査を実施した。測定項目としては,導入部では,直接導入資料,配送物,コピー用紙について,系内では,うら紙の発生量と使用量,FAXの受信量・送信量について,送出部では,直接送出資料,間接送出資料,可燃ごみ,資源ごみについて,その重量を項目別に調査票に記入した。実態調査は1995年の6月から9月にかけて,各社一週間で行った。測定結果をもとに,各企業における物質とエネルギーの出入りをまとめ,環境監査の基礎的データとなる環境収支簿記を作成した。また,それをもとに物質の流れ図も作成した。環境収支簿記をもとに,8社の企業における環境影響評価および改善評価を行った。これにはCO2発生量を指標として,LCAによるシミュレーションを行った。8社のうち,4社はCO2総発生量の約3割を既に削減していたが,2社は1割弱であり,残り2社はほとんど削減していなかった。このように現状での取り組み達成度は各社異なっていたが,今後の取り組みによる将来削減可能量としては8社ともCO2では約6割となることがわかった。
キーワード: 環境パフォーマンス評価,環境監査,系と環境,環境収支簿記,CO2発生の削減
廃棄物学会論文誌,Vol. 8, No.6, pp.251-260, 1997
原稿受付 1996.12.27
* 広島大学大学院 生物圏科学研究科
連絡先:〒739 東広島市鏡山1-7-1
広島大学大学院 生物圏科学研究科 早瀬 光司