【論  文】

都市ごみ焼却施設における排ガス処理技術の適用による塩化水素と二酸化硫黄の排出削減量

谷 川   昇*・浦 野 紘 平**

【要 旨】 都市ごみ焼却施設において,塩化水素(HCl)と二酸化硫黄(SO2)の処理技術等の適用による排出低減効果を明らかにし,東京23区と日本全国における都市ごみ焼却施設からのHClとSO2の排出削減量を考察した。処理技術を採用しない場合のHCl排出濃度は,ごみ中のプラスチック類の分別方法,排ガス冷却方法,集じん装置の種類によって異なり,約300〜650ppmであった。また,SO2排出濃度は,集じん装置の種類によって異なり,約44〜64ppmであった。電気集じん装置(EP)を組み合わせた粉体噴射法を採用した場合には,HC?排出濃度は約200〜410ppm,SO2排出濃度は約30ppmであった。一方,EPを組み合わせた湿式法を採用した場合には,HCl排出濃度は約6〜12ppm,SO2排出濃度は約2ppmであった。東京23区の都市ごみ焼却施設においては,1980年からの15年間に焼却ごみ量が約1.4倍に増加したが,HClとSO2の排出負荷量は,排ガス処理技術の採用によって微増傾向に抑えられている。また,1992年の日本全国における都市ごみ焼却施設からのHClとSO2の排出負荷量は,それぞれ9.1×104t/yと1.8×104t/y程度と推算され,排ガス処理技術によるHC?とSO2の排出削減量は,それぞれ7.6×104t/yと2.0×104t/y程度と推算された。

キーワード: 都市ごみ焼却,塩化水素,二酸化硫黄,排出負荷量,排ガス処理

廃棄物学会論文誌,Vol. 8, No.6, pp.261-269, 1997

原稿受付 1996.9.13

* 東京都清掃研究所

** 横浜国立大学工学部物質工学科

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東京都清掃研究所 谷川 昇