【特 集 :温暖化問題と廃棄物】

埋立構造の違いによる温室効果ガスの発生と制御

松 藤 康 司*・立 藤 綾 子**

【要 旨】 廃棄物埋立地から発生するメタンは,環境庁の報告によると,わが国のメタン全発生量の約30%を占めるといわれており,地球温暖化防止の面からも注目されている。埋立地から発生するガスは二酸化炭素とメタン等の温室効果ガスが主体であるが,その発生メカニズムや組成は埋立構造の違いによって大きく異なるものの,この埋立構造の違いによる温室効果ガスの発生割合や温暖化への寄与等は明らかにされていない。そこで,本報告では,埋立模型槽による長期にわたる物質収支の実測データを基に埋立構造別のガス発生予測モデル式を検討し,埋立構造の違いによる温室効果ガスの発生量を予測するとともに,Sheldon Arletaモデルを用いて埋立構造の転換に伴う発生ガス量の変化とその削減対策について検討した。その結果以下のことが明らかになった。1)埋立構造の違いによる発生ガス量予測モデル式は埋立廃棄物中の易分解性有機物あたりの累積ガス化率の経時変化曲線を回帰した式によって表現できる。2)上記のモデル式を用いて生ごみが主体に埋立処分された実際の埋立地からの発生ガス量を埋立構造別に算出した結果,準好気性埋立区画は嫌気性埋立区画に比べて温室効果ガス発生量が54%少なかった。3)埋立構造を嫌気性から準好気性へ転換することによって温室効果ガスの発生量を抑制することができる。4)本試算によって求めた1995年度における最終処分場からのメタン発生量は,0.32Mt・C/年であり,わが国のメタン排出総量(0.93〜1.47Mt・C/年)への寄与率は21.8〜34.4%程度である。

キーワード: 地球温暖化,温室効果ガス,固体廃棄物,埋立構造,準好気性埋立

廃棄物学会誌,Vol. 8, No.6, pp.438-446, 1997

原稿受付 1997.8.25

* 福岡大学工学部土木工学科 教授

** 福岡大学工学部土木工学科 助手

連絡先:〒814-80 福岡市城南区七隈8-19-1

福岡大学工学部土木工学科 立藤 綾子