【論  文】

高濃度COD,アンモニア性窒素を含む写真廃液の処理プロセスに関する研究

太 野 公 人*・林   彬 勒**・横 井 亜 希**・細 見 正 明**・村 上 昭 彦**

【要 旨】 産業廃棄物の投棄による海洋汚染防止条約(ロンドン条約)の制限を受け,写真廃液を経済的かつ実用的に処理できる陸上処理プロセスの研究開発は緊急の課題となっている。その処理法として本研究では,過酸化水素処理―生物学的硝化・有機物処理―脱窒処理という複合プロセスを検討した。その結果,写真廃液中のTOC, CODともに96%,T-N99%,T-P98%除去できることを確認した。過酸化水素処理では,写真廃液中の鉄を利用してpHの調整もなく過酸化水素を添加するだけでフェントン反応が生じ,難分解性現像主薬の生物分解性を向上するとともに,廃液中のTOC, CODもそれぞれ60%,87%除去された。生物学的硝化・有機物処理では負荷量0.09〜1.0kgNH4-N/?/d(滞留時間HRT:11.6〜3.7日)で連続処理した結果,ほぼ完全な硝化が行われ,TOC, CODはそれぞれ150mg/?,173mg/?にまで低下した。脱窒処理では上向流嫌気汚泥法(UASB)を用いて負荷量は0.39〜0.78kgNO2,3-N/?/d(HRT:4.9〜2.4日)で連続処理を行ったところ,平均窒素除去率として99%が得られた。

キーワード: 写真廃液,過酸化水素処理,難分解性物質,硝化・有機物処理,生物脱窒,活性炭

廃棄物学会論文誌,Vol. 8, No.7, pp.303-310, 1997

原稿受付 1997.1.23

* 東京田辺製薬(株)

** 東京農工大学 工学研究科物質生物工学専攻

連絡先:〒184 東京都小金井市中町2-24-16

東京農工大学工学部 細見 正明