酵素免疫測定法によるダイオキシン類のスクリーニングに関する研究
坂 井 るり子*・大 迫 政 浩**・吉 田 幸 弘***・芳 賀 直 樹***・岩 島 清*・田 中 勝**
【要 旨】 廃棄物の処理・処分の各段階におけるダイオキシン類を低コストで迅速に検知する方法の一つとして,近年開発された酵素免疫測定(EIA)法の適用可能性について検討した。まずダイオキシンEIAの感度と再現性および濃度依存性を確認した。次に都市ごみ焼却施設からのEP灰試料を用いて干渉物質の影響について検討し,粗抽出試料と最終精製試料とで有意な差がなく,EP灰では粗抽出液での測定が可能であることが示された。さらにEP灰に加え排ガスや汚泥試料の粗抽出液を用いてEIA測定を行い,GC/MS分析によるTEQ値との比較を行った。両者の間には良好な相関が得られたが,低濃度域試料ではダイオキシン類の存在量に依存しない正の干渉要素が示唆された。これらの詳細な検討は課題として残るものの,EIA法はダイオキシン類のスクリーニング技術として有望であり,抽出操作の迅速簡易化や低濃度域試料における妨害要素の除去により,さらに広範囲な適用が可能になると考えられる。
キーワード: 酵素免疫測定法,ダイオキシン類,スクリーニング技術,GC/MS分析,TEQ
廃棄物学会論文誌,Vol. 8, No.7, pp.311-320, 1997
原稿受付 1996.12.16
* (株)環境管理センター 環境基礎研究所
** 国立公衆衛生院 廃棄物工学部
*** (株)環境管理センター 分析センター
連絡先:〒192-01 東京都八王子市下恩方町323-1
(株)環境管理センター・環境基礎研究所 坂井 るり子