【論  文】

大学内の有機溶剤の管理状況と問題点

明 河 一 彦*・立 田 真 文**・池   道 彦**・藤 田 正 憲**

【要 旨】 日本各地で環境汚染を引き起こしているトリクロロエチレンなど有機溶剤の学術研究機関における使用と回収の状況を,大阪大学工学部をモデルとして,アンケート様式で調査し,管理方法のあるべき姿を考察した。アンケート調査から溶剤の種類や研究室の運営方式によって,回収率に大きな差があることが明らかになった。また低い回収率の原因は,主に研究室の管理体制の不備,個々の実験者の溶剤管理の認識不足であることが示された。さらに収集したデータに研究室での聞き取り調査を加味して未回収溶剤の大気,排水への放出量を推定した。その結果,環境中への放出の内訳は,大気中へ約70%以上,排水中へは約30%以下であると推定された。ジクロロメタンなどは未回収量の約7%程度が排水中に放出された場合でも排水規制値を超えてしまう結果となり,溶剤管理には細心の注意を払わなければならないことが再確認された。

キーワード: 有機溶剤,管理状況,環境放出

廃棄物学会論文誌,Vol. 8, No.7, pp.327-334, 1997

原稿受付 1997.3.13

* 大阪労働基準局

** 大阪大学工学部環境工学科

連絡先:〒565 大阪府吹田市山田丘2−1

大阪大学工学部環境工学科 第5講座 藤田研究室 立田 真文