【特 集:埋立地における高塩類問題と技術的対応―研究委員会研究活動(埋立処理処分部会)―】

日本における塩収支と問題点

樋 口 壯太郎*

【要 旨】 廃棄物中の塩化合物は,焼却処理の過程で熱分解を受け,塩化水素ガスとなるため,これを安定化処理し,塩化カルシウムとして埋立処分される。このため,浸出水中の塩素イオンやカルシウムイオン濃度が上昇し,さまざまな障害をもたらせている。今回,この原因となっている塩素についての生産・輸入から廃棄までの物質収支を検討した。この結果,わが国で生産される塩素(84万ton/年)をはるかに上回る塩素が消費され廃棄されていることがわかった(570万ton/年)。また,一般廃棄物においては年間10万tonの塩素が埋立地に蓄積されていることがわかった。

キーワード: 塩,塩素,塩素イオン,塩化水素,最終処分場

廃棄物学会誌,Vol. 8, No.7, pp.486-492, 1997

原稿受付 1997.11.10

* 日本技術開発(株) 東京支社環境施設部 部長

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