【論  文】

灰溶融炉で生成されるメタルの性状およびその資源化に関する調査

占 部 武 生*・小 林 重 夫*

【要 旨】 アーク式灰溶融炉で生成したメタルの性状および資源化に関する調査を行った。水冷により砂状のスラグと10〜15%の粒状メタルが発生する。粒状メタルは内部に空孔をもち,平均粒径は1.8mm,見掛比重は約3.28t/?であった。粒状メタルの硬度(HV0.1)は約950で非常に硬く,耐食性があった。この粒状メタルはSi15.03%,Cu9.33%を含み,Ni, Cr, Sn, Ag, Au等の多種類の金属成分を含む合金鋼であり,鉄鋼材料で忌避されるP, Cuを多く含むという特徴を持つ。熱力学的考察を行い,メタル中のPはCOガス等によって,SiはAlやCによって還元されメタルに移行した可能性が高いことをを示した。粒状メタル等を大気中で再溶解したとき生成した引け巣は真空脱ガス溶解を行うことによりかなり減少したが,利用するにはまだ十分ではなく,さらに再精錬,鋳造方法等について検討する必要がある。また,全体のCu含有率が25%程度以上のものを溶解後徐冷すると,Cu合金層が分離することがわかった。メタルの有効利用の用途として,重機等のウエイトバランス材のほかに,低級鋳物材,製鉄原料としての利用等が考えられる。

キーワード: 灰溶融炉,メタル,資源化,真空溶解

廃棄物学会論文誌,Vol. 9, No.1, pp.1-10, 1998

原稿受付 1997.4.22

* 東京都清掃研究所 主任研究員

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