【論  文】

黒鉛発熱体誘導加熱方式による焼却灰溶融システムの開発

荒 戸 利 昭*・大 河 内 功*・安 田   健*・山 下 寿 生*

【要 旨】 埋め立て処分場の延命,負荷低減さらには有害物の無害化に対する有効な手段として,都市ごみ焼却灰の溶融固化が注目され,現在種々の技術開発が行われている。本研究では,黒鉛発熱体を炉内に積層することによって大きな溶融表面積を有することを特徴とする誘導加熱方式の溶融炉を提案し,灰処理能力0.8ton/日の実験設備を用いて,都市ごみ焼却灰の溶融特性を検討した。総溶融時間31時間では,93.9%の高スラグ化率が得られた。黒鉛発熱体の追加投入により,温度および出滓量が制御でき連続運転が可能になる。黒鉛発熱体の消耗低減には,灰中の酸化鉄濃度を下げること,灰溶融炉内のO2分圧を下げかつ運転温度を灰溶流点に近づけることが有効である。発熱体消耗低減対策後,黒鉛消耗量は灰1tonあたり8.9kgであった。スラグ固化体からの重金属類の溶出は埋立基準以下である。

キーワード: 焼却灰,電磁誘導加熱,溶融,スラグ,溶出

廃棄物学会論文誌,Vol. 9, No.1, pp.20-28, 1998

原稿受付 1997.5.12

* (株)日立製作所 日立研究所

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(株)日立製作所 日立研究所E2部 新火力システムGr. 内 荒戸 利昭