廃棄物埋立地における硫酸塩還元およびメタン生成経路による難分解性有機物の分解特性:連続実験
金 錫 九*・松 井 三 郎*・Sandeep Pareek*・清 水 芳 久*
【要 旨】 難分解性廃棄物の分解特性を究明するため,廃棄物埋立地を模した硫酸塩還元およびメタン生成の埋立模型反応槽を用いて難分解性廃棄物の分解実験を行い,浸出水およびガス発生特性を通して難分解性廃棄物の分解特性を考察した。検討の結果,硫酸塩還元槽では,硫酸塩還元反応が起こって,完全な還元状態が作り出された。浸出水のpHは6.5〜7.5でほぼ中性であった。また,硫酸塩還元槽浸出水は,CODやTOCのみならず,セルロース加水分解産物であるグルコースやリグニン分解産物である芳香族物質を高濃度に含むことから,セルロースやリグニンの分解がメタン発酵槽より速く進んでいることがわかった。硫酸塩還元槽におけるメタンガス発生量は,メタン発酵槽に比べ硫酸塩還元反応によって20〜35%少なくなる。また,硫酸塩還元槽の浸出水は,pHが高いために二酸化炭素が浸出水に多量に溶解し,二酸化炭素ガス発生量もメタン発酵槽より20〜30%少なくなり,硫酸塩還元槽では,メタンガス発生のみならず二酸化炭素ガス発生の抑制ができることがわかった。
キーワード: 埋立地,メタン発生,硫酸塩還元,難分解性有機物
廃棄物学会論文誌,Vol. 9, No.2/3, pp.79-86, 1998
原稿受付 1997.7.15
* 京都大学工学部附属環境質制御研究センター
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京都大学工学部附属環境質制御研究センター 金 錫九