マニラ麻アルカリ蒸解廃液を培養基質としたAspergillus terreusによるアルカリ性リグニン分解酵素の生産
金 山 望*・鈴 木 徹**・河 合 啓 一**
【要 旨】 マニラ麻アルカリ蒸解廃液の有効利用と,アルカリ側に作用域を持つリグニン分解酵素生産菌の単離を目的に,マニラ麻アルカリ蒸解廃液を培養基としてスクリーニングを行った。その結果,本培地で生育する糸状菌(Aspergillus terreus)を分離することができた。この菌は培養濾液中にリグニン分解酵素(リグニンパーオキシダーゼ,マンガンパーオキシダーゼおよびフェノールオキシダーゼ)活性を認めた。これらのリグニン分解酵素はいずれもアルカリ側に作用域を持つユニークな酵素であった。したがって現在主流となっているアルカリ条件下でのパルプ製造におけるパルプの漂白や蒸解廃液の処理に本菌を利用できるものと考えられる。
キーワード: 蒸解廃液,Aspergillus terreus,リグニンパーオキシダーゼ,マンガンパーオキシダーゼ,フェノールオキシダーゼ
廃棄物学会論文誌,Vol. 9, No.2/3, pp.87-94, 1998
原稿受付 1997.6.9
* 大福製紙株式会社
** 岐阜大学農学部生物資源利用学科
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大福製紙(株)技術部研究課 金山 望