【特 集 :残留性有機汚染物質(POPs)】

残留性有機汚染物質(POPs)と廃棄物――その管理体系の考え方――

酒 井 伸 一*・高 月   紘*

【要 旨】 残留性,生物濃縮性,揮散移動性,毒性を有する有機物質が残留性有機汚染物質(POPs)である。物理化学特性との関係では,オクタノール水分配係数,土壌吸着平衡定数,生物濃縮係数が相互に関連し,さらに分解性ファクターなどが関連して半減期が定まることとなる。さらに地球規模の移動性に関連する揮散性に対しては,蒸気圧,オクタノール大気分配係数などが重要である。これらの物理化学特性を反映して,地域規模,地球規模での空間分布が決定され,さらにその分布に至る時間遅れが規定されることとなる。循環・廃棄との関係では,意図的用途に生産され,その後使用が取り止められたPOPsである廃PCBや廃農薬などの適正処理が求められる。燃焼過程において,こうした意図的生成物としてのPOPsが副生成物として生じ得ることをコプラナーPCBの例で示した。そして,ダイオキシン類やコプラナーPCBなど非意図的副生成物の発生抑制,環境サイクルコントロールが肝要である。

キーワード: 残留性有機汚染物質(POPs),環境残留性,蒸気圧,オクタノール大気分配係数,ダイオキシン類,ポリ塩化ビフェニル(PCBs),廃農薬類,発生抑制,環境サイクルコントロール

廃棄物学会誌,Vol. 9, No.3, pp.211-225, 1998

原稿受付 1998.2.23

* 京都大学環境保全センター 助教授

** 京都大学環境保全センター 教授

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京都大学環境保全センター 酒井 伸一