【特 集:残留性有機汚染物質(POPs)】

残留性有機汚染物質(POPs)の環境動態――五大湖におけるPCBの研究――

益 永 茂 樹*

【要 旨】 残留性有機汚染物質(POPs)の環境動態が最も詳しく研究されているは,北米五大湖におけるポリ塩化ビフェニール(PCB)汚染である。そこで,ここではPOPsの環境動態の理解のため,五大湖におけるPCBの研究で得られている知見を紹介する。PCBの生産と使用によって汚染された五大湖では魚や野鳥の汚染とその悪影響が問題となり,汚染源対策がとられた。汚染レベルの改善は進んだが,未だに採れた魚の食料としての利用を制限する勧告が存在する。最近の研究では,減少したPCB流入量より遙かに大きい量のPCBが湖と大気の間で,あるいは,堆積物と湖水との間でやり取りされていることが明らかになってきた。また,PCBの大気を介した長距離輸送の様子もわかってきた。そして,ダイオキシン様毒性を持つPCBの生物濃縮にも注目が集まっている。

キーワード: 残留性有機汚染物質,POPs,PCB,五大湖,環境挙動

廃棄物学会誌,Vol. 9, No.3, pp.226-234, 1998

原稿受付 1998.2.19

* 横浜国立大学 環境科学研究センター 教授

連絡先:〒240−8501 横浜市保土ヶ谷区常盤台79-7