【特 集 :残留性有機汚染物質(POPs)】

PRTRとPOPs

中 杉 修 身*

【要 旨】 PRTRは,化学物質の排出量を報告させることによって事業者に自主管理を促進する手段として,米国,カナダ,英国,オランダなどで既に導入されているが,OECDの勧告を受けてわが国でもパイロット事業が行われている。この中では,暴露と有害性の両面からから高いリスクを有するとして選定された178物質について,大気,水,土壌への排出量と廃棄物としての移動量を報告することを事業者に求めている。また,移動発生源や家庭などの面源については行政が排出量を把握している。環境に蓄積するPOPsによる環境リスクを低減するには,排出濃度よりも排出量を削減することが重要であり,排出量を管理させるPRTRはPOPsのリスク低減に有効に働くと期待されるが,POPsの多くは非意図的な生成に伴う排出が主であり,予め発生源を特定し,報告を求める事業者を特定しておくことが必要となる。

キーワード: PRTR, POPs, 化学物質,自主管理

廃棄物学会誌,Vol. 9, No.3, pp.263-272, 1998

原稿受付 1998.2.10

* 国立環境研究所 化学環境部長

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