【論  文】

焼却廃棄物中の窒素化合物による遺伝毒性

小 野 芳 朗*・山 田 正 人**・宗 宮   功***・小 田 美 光****

【要 旨】 廃棄物の燃焼に伴い発生すると考えられる物質群の中でも,蛋白質や石油などの燃焼に伴い発生するとされているアミノアレーン,ニトロアレーンに着目し,その遺伝毒性を評価しようとした。対象として,都市下水処理場の汚泥焼却工程の洗煙排水,そして廃棄物焼却場の飛灰,底灰の抽出物,処分場浸出水を調べた。試験方法は化学物質のDNA損傷の誤りがちの修復を検出するumu-testでアミノアレーン,ニトロアレーンに高感度検出系を適用した。その結果,いずれの処理工程においてもこれら物質群による遺伝毒性が認められた。これらを抽出物質量あたりの遺伝毒性値で比較すると,アミノアレーンは一般廃棄物焼却場の飛灰に,またニトロアレーンは都市下水処理場の多段炉洗煙排水と処分場浸出水原液に高く検出された。このように廃棄物の燃焼工程において,遺伝毒性物質としてアミノ,ニトロの誘導体のモニタリングの必要性を示唆した。

キーワード: 燃焼灰,アミノアレーン,ニトロアレーン,遺伝毒性,umu-test

廃棄物学会論文誌,Vol. 9, No.4, pp.115-122, 1998

原稿受付 1997.7.22

* 岡山大学環境理工学部環境デザイン工学科 助教授

** 国立公衆衛生院廃棄物工学部 研究員

*** 京都大学大学院工学研究科 教授

**** 大阪府立公衆衛生研究所公衆衛生部 主任研究員

連絡先:〒700-8530 岡山市津島中2-1-1

岡山大学環境理工学部 小野 芳朗