【論  文】

テトラクロロエチレン汚染土壌の生物処理実験

徳 永 隆 司*・花 嶋 正 孝**・松 藤 康 司**・世 良 暢 之*・永 淵 義 孝*・北 森 成 治*・古 川 謙 介***

【要 旨】 土壌中のテトラクロロエチレン(PCE)の嫌気的脱塩素化処理を目的として,汚染土壌を詰めたカラムを用いて実験した。脱塩素化菌群の集積培養液を植種源として,また豆腐製造廃液を電子供与体として用い,29ヵ月間,汚染土壌を浸漬したところ,土壌中のPCEの約35%および間隙水中の88%以上がジクロロエチレン(DCE)まで脱塩素された。しかし,エチレンまでの完全脱塩素化は進行しなかった。一方,汚染土壌の上部に電子供与体となるウッドチップを詰めて,下部から溶出液を採取する半連続カラム実験を行ったところ,25日後の溶出液中には,DCEだけが検出された。それとともに,DCEの溶出量が増加し,計算では,汚染土壌中のPCEの完全溶出年数は11.7年から4.5年に減少した。このカラム実験でも,完全脱塩素化は困難であったことから,カラム溶出液中のDCEの好気的分解を検討した。その結果,トルエンまたはフェノールを添加した場合にDCEの分解が認められた。また,遺伝子組換え菌の静止菌体の利用が特に有効であった。

キーワード: テトラクロロエチレン,バイオレメディエーション,嫌気性処理,土壌汚染,地下水汚染

廃棄物学会論文誌,Vol. 9, No.5, pp.198-207, 1998

原稿受付 1997.4.28

*・* 福岡県保健環境研究所

** 福岡大学工学部土木工学科

*** 九州大学農学部農芸化学科

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福岡県保健環境研究所 徳永 隆司