最終処分場におけるカルシウムスケール生成の予測
野 馬 幸 生*・貴 田 晶 子*
【要 旨】 最終処分場におけるカルシウムスケール対策は,従来の埋立工法や浸出水処理技術では対応できず,障害発生後,対策が行われているのが現状である。スケール生成後に対策を考えるのではなく,現在の浸出水の水質からスケール生成の可能性を予測することは処理施設の管理上重要と考えられる。そこで一般廃棄物最終処分場においてスケール生成の確認と浸出水の水質調査を行い,炭酸カルシウムの生成に関する指標および影響因子をスケール生成の実態と比較し評価した。カルシウムスケールの生成には,カルシウム濃度,アルカリ度,水温,イオン総量が関与しているが,浸出水では,水温とイオン総量の影響は小さく,カルシウム濃度とアルカリ度の寄与が大きいことがわかった。また,飽和指数および安定度指数をスケール生成の実態と比較したところ,飽和指数ではスケールが生成していない処分場をスケールが生成しやすいと過大評価し,安定度指数では生成している処分場をスケール生成が起きないと過小評価していた。15施設の浸出水水質とスケールの生成状況を評価した結果,スケール生成の評価基準として,炭酸カルシウム飽和pH(pHs)7以下で,カルシウム濃度が100mg/l以上,アルカリ度が100mg/l以上という条件が妥当であることがわかった。
キーワード: カルシウムスケール生成予測,炭酸カルシウム飽和pH,アルカリ度,最終処分場浸出水,化学平衡計算
廃棄物学会論文誌,Vol. 9, No.5, pp.215-223, 1998
原稿受付 1997.12.8
* 広島県保健環境センター
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広島県保健環境センター 野馬 幸生