【特 集 :バイオアッセイ】

マイクロコズムによる生態系影響評価

稲 森 悠 平*・高 松 良 江**・須 藤 隆 一***

【要 旨】 化学物質や微量汚染物質含有排水の水圏生態系に対するエコシステムレベルでの毒性試験の重要性が指摘されている。しかしながら,主として用いられている現在の試験法は,OECD試験に代表される単一生物種試験である。本報では,水圏生態系への影響を評価するために,複数以上の生物種が存在し,生産者・捕食者・分解者の存在する多種生物系試験としてマイクロコズム試験に着目し,化学物質や微量汚染物質含有排水の水圏生態系におよぼす影響について,既往の研究成果をふまえ,マイクロコズム試験の有効性と活用法についての意義を述べた。また,同時にマイクロコズム試験は,現実の湖沼・池・河川等の場とコンパラブルではないにしても,生態系の構造,機能等とはコンパラブルであり生態系のモデルとして有効であることから,物質循環・エネルギーフロー・生物間相互作用が存在するマイクロコズムを生態系のモデルとして生態系影響評価試験として活用することの重要性を明らかとした。

キーワード: マイクロコズムシステム,化学物質,埋立地浸出水,生態系影響評価,エコトキシコロジー

廃棄物学会誌,Vol. 9, No.5, pp.368-378, 1998

原稿受付 1998.6.4

* 国立環境研究所 総合研究官

** 筑波大学大学院農学研究科 博士課程

*** 東北大学工学研究科 教授

連絡先:〒305-0053 茨城県つくば市小野川16-2

国立環境研究所 総合研究官 稲森 悠平