【特 集 :バイオアッセイ】

個体毒性の検証に基づくin vitro簡易毒性評価系の確立

市 川 和 洋*・鄭  然  孫*・内 海 英 雄*

【要 旨】 in vitro簡易毒性評価系を水質評価に適用するためには,その毒性学的意義を明確にすることが重要である。本研究では酸化ストレスに着目し,有機ハロゲン化合物の簡易毒性評価法として動物培養細胞を用いたin vitro小核試験とともにマウス個体での肝障害性の評価系を開発し,in vitro簡易毒性評価系の確立を図った。塩素化フェノールによる小核形成はS9mixにより亢進し,ラジカル消去剤により有意に抑制されたことから,活性酸素種の関与と酸化ストレス評価の有効性が示された。一方,マウス個体では四塩化炭素・塩素化フェノールともに血清GOT量を上昇させ,またマウス上腹部のラジカル反応を亢進させたことから,これら化合物の肝代謝物が酸化ストレスを惹起し肝障害をもたらすことが示唆された。本研究で構築した系はin vitro簡易毒性評価法での結果を個体毒性の面から検証することが可能で,その毒性学的裏付けを行う上で有用であろう。

キーワード: in vitro小核試験,電子スピン共鳴法,個体毒性,有機ハロゲン化合物

廃棄物学会誌,Vol. 9, No.5, pp.379-383, 1998

原稿受付 1998.6.8

* 九州大学薬学部 薬品物理化学教室

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九州大学薬学部 教授 内海 英雄