【特 集 :バイオアッセイ】

変異原性試験による廃棄物埋立地の安全性評価

花 嶋 正 孝*・立 藤 綾 子**

【要 旨】 昨今,有機化学物質による生態系の異常が顕在化しており,化学物質の安全性評価手法としてバイオアッセイが注目されている。本報は,埋立地周辺の安全性を評価することを目的として,著者らが十数年来調査研究を行ってきた「埋立地の変異原性」について取りまとめたものである。その中で,埋立地浸出水中の変異原性物質はpH2の酸性条件下でSep-Pak Plus CSP800に効率よく吸着される物質であることがわかった。また,浸出水中の変異原性物質の大部分がS. typhimurium TA98株,S9mix無添加条件下で検出されるフレームシフト型の直接変異原物質であり,変異原性をモニタリング指標として利用する場合,検出操作の簡素化が期待できることがわかった。埋立地における変異原物質の消長は微生物の好気性代謝と関連しており,変異原物質は埋立層内が好気的になる程早く浸出水中に溶出し,早期に消失することもわかった。これは,埋立地において変異原物質の制御が可能であることを示している。今後の課題として,(1)非変異有害物質の検出方法の確立,(2)埋立地内に存在する変異原前駆物質のリスト評価上における位置付け,(3)変異原物質の化学的正体の解明等が残された。

キーワード: 廃棄物埋立地,変異原性,安全性評価指標,前駆物質,変異原物質の消長

廃棄物学会誌,Vol. 9, No.5, pp.394-403, 1998

原稿受付 1998.5.2

* 福岡大学工学部土木工学 教授

** 福岡大学工学部土木工学 助手

連絡先:〒814-0180 福岡市城南区七隈8-19-1

福岡大学 助手 立藤 綾子