公共空間における散乱ごみ防止のための,実験系の設定,散乱ごみの分析,人員の動態計測およびごみ発生原単位に関する基礎的研究
早 瀬 光 司*・錫 木 圭一郎*
【要 旨】 散乱ごみ防止のための基礎データを得ることを目的として,広島大学構内の公共空間である「スペイン広場階段部」を実験系に設定し,20の小系に分け,雨天の日を含む一週間にわたって散乱ごみの組成分析を行い,排出源としての滞留・通過人員を写真撮影により計測した。雨天時の結果から,散乱ごみ発生に対する通過人員のみの寄与を観測することができ,散乱ごみ発生原単位として,缶びんごみでは滞留人員を基に,吸殻ごみでは全人員を基にして算出するのが適当であることが示された。缶びんごみ,吸殻ごみの発生原単位はそれぞれ,0〜0.16(一週間平均で0.10),0.54〜1.00(同平均で0.66)個/人・時と算出された。本実験系は,散乱ごみの研究を行う上で充分実用的な系であると考えられ,今後は,通常の状態における散乱ごみ発生をレファランスとして,法的規制,用具類の設置,啓発活動などを行った後の散乱ごみ発生の状態変化を探り,散乱ごみ防止のための実践的研究を行っていく場として活用される。
キーワード: 散乱ごみ,公共空間,実験系の設定,人員の動態,ごみ発生原単位
廃棄物学会論文誌,Vol. 9, No.6, pp.274-280, 1998
原稿受付 1997.11.25
* 広島大学大学院生物圏科学研究科
連絡先:〒739-0046 東広島市鏡山1-7-1
広島大学総合科学部 早瀬 光司