【論  文】

灰溶融時に生成するメタルの化学組成

原     雄*・根 本 久美子*・中 村 政 夫**・田 村   稔**

【要 旨】 表面溶融炉において混合灰(主灰/飛灰)の溶融によって生成したメタルの化学組成を調査した。それらのメタルは,水冷スラグから分離したmmサイズのもの,スラグを微粉化することによって分離される数100μmサイズ以下のものおよびスラグ微片からは分離されないものからなる。mmサイズメタル粒の化学組成は,蛍光X線分析によりFeないしFe・Cuを主成分とし,粉末X線回折により金属Fe相・金属Cu相および(Fe4Cu3)相を形成していることがわかった。数〜300μmサイズメタルの化学組成は,走査型電子顕微鏡と組み合わせたエネルギー分散型スペクトロメーターにより分析した。それらのメタルは,Fe,Cu,Si,Cr,Co,Ni,Zn,Sn,Sb,Pbというように多種類の金属元素を含むが,Feを主成分とするメタル粒およびFe・Cuを主成分とするメタル粒が卓越して認められた。また,Cr-Fe-Ni系,Fe-Co-Ni系,Fe-Cu-Sn-Sb系,Fe-Sn系,Ti-Sb系,Pb-O-S-Cl系などの特徴的な組成を持つ微粒が認められた。

キーワード: 溶融メタル,表面溶融炉,蛍光X線分析,粉末X線回折,エネルギー分散型X線スペクトロメーター

廃棄物学会論文誌,Vol. 10, No.2, pp.97-106, 1999

原稿受付 1998.8.17

* 千葉県廃棄物情報技術センター

** 我孫子市

連絡先:〒290-0046 市原市岩崎西1-8-2

千葉県廃棄物情報技術センター 原  雄