焼却排ガスの熱力学平衡論による考察
――金属塩化物からの塩素ガスの発生――
北 野 誠*
【要 旨】 NaCl,KCl,CuCl,NiCl2,ZnCl2,FeCl2を用いて熱力学平衡関係から発生する塩素ガス濃度を検討した。検討温度範囲は二次燃焼炉から始まる排ガス処理過程の温度低下領域をカバーする500-1,100Kを検討対象とした。その結果,NaClとKClを起源とする平衡塩素濃度は小さく無視でき,CuClは温度低下に伴って分解の結果発生する塩素ガス濃度が増加するという点でその他の金属塩化物とは際立った違いを見せた。すなわち,他の金属塩化物は温度低下にしたがい塩素ガス濃度も低下し,500Kでは数から100ppm程度まで減少するが,CuClは,酸素分圧0.1atmの状況下では分解し塩素ガス濃度で約104から105ppmと平衡する。また,573Kにおいては,CuCl,FeCl2,ZnCl2,NiCl2の順で高い塩素ガスと平衡することが示された。
キーワード: 塩素ガス,金属塩化物,塩化銅,ダイオキシン,熱力学平衡関係
廃棄物学会論文誌,Vol. 10, No.2, pp.111-115, 1999
原稿受付 1998.8.12
* 東京大学 先端学際工学専攻