廃棄物中の有害金属類の溶出ポテンシャルに関する研究
――逐次抽出法による溶出試験結果の評価――
欧 陽 通*・鳥 貝 真*・坂 井 るり子*・王 寧*・尹 順 子*・岩 島 清*・大 迫 政 浩**
【要 旨】 埋立地内における固形廃棄物中の有害金属類の溶出ポテンシャルに影響をおよぼす要因のうち,溶液のpHとともに金属元素の存在化学形態および酸化還元電位が重要である。筆者らは,Availability Testを一部改変した溶出試験(A-test: pH4固定溶出)を焼却飛灰等の数種類の廃棄物試料に適用し,有害金属類等10元素の溶出結果に,それらの存在化学形態がどのように寄与するかを考察した。各金属元素の存在化学形態の把握には逐次抽出法を適用した。さらに,酸化還元電位が諸元素の溶出結果におよぼす影響についても存在化学形態との関連から検討した。その結果,逐次抽出法により有害金属元素が環境へ移行・拡散する可能性ありと推測された部分は,A-testを用いても,すべてが溶出されるとはいえないことが示された。酸化還元電位の低い低酸素雰囲気下におけるA-testでは,As, SbおよびMoの溶出量が増加し,Cd, Cu, Ni, Pb,およびZnの溶出量は低下した。このような異なる酸化還元条件下でのA-testによる廃棄物中諸元素の溶出挙動の違いは,逐次抽出法を用いて溶出前後における存在化学形態の変化を解析することにより,主にFe, Mnの水和酸化物とみなされる還元性可溶画分における変化と関連していることが明らかになった。
キーワード: 溶出ポテンシャル,溶出試験法,酸化還元電位,存在化学形態,逐次抽出法
廃棄物学会論文誌,Vol. 10, No.3, pp.142-151, 1999
原稿受付 1998.4.16
*(株)環境管理センタ− 環境基礎研究所
** 国立公衆衛生院 廃棄物工学部
連絡先:〒192-0154 東京都八王子市下恩方町323-1
(株)環境管理センタ− 環境基礎研究所 欧陽 通