嫌気性消化におよぼす硝酸性および亜硝酸性窒素の影響
具 仁 秀*・宮 原 高 志*・野 池 達 也*
【要 旨】 嫌気性消化槽に脱窒槽としての機能を持たせることを目的として,一般に嫌気性細菌に対する阻害物質と考えられている硝酸および亜硝酸性窒素のメタン生成反応への影響とともに脱窒反応への影響を同時に回分実験によって検討した。硝酸を添加した系および亜硝酸を添加した系ともにCOD/N23.1以上では最大メタン生成速度はほぼ一定の値であったが,生成可能な最大メタン生成量はCOD/Nの低下に伴って減少した。酢酸を有機炭素源とした場合,酢酸からメタンへの転換率はCOD/Nの低下に伴って低下したが,硝酸性窒素から窒素への転換率はCOD/N15で最大となり,COD/Nを最適値より増大あるいは低下させると脱窒率は減少した。グルコースを有機炭素源とした場合,硝酸性窒素および亜硝酸性窒素を添加した系の脱窒率は,それぞれCOD/N15およびCOD/N6で最大となり,どちらの場合も酢酸と硝酸性窒素を用いた場合と同様にCOD/Nを最適値より増大あるいは低下させると脱窒率は減少した。
キーワード: 嫌気性消化,酸生成,阻害,脱窒,メタン生成
廃棄物学会論文誌,Vol. 10, No.3, pp.152-159, 1999
原稿受付 1998.9.14
* 東北大学大学院工学研究科土木工学専攻
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東北大学大学院工学研究科土木工学専攻 野池 達也