【特 集 :内分泌攪乱物質】

内分泌攪乱物質の雄性生殖系への影響

武 田   健*

【要 旨】 内分泌攪乱化学物質の作用の特徴は,受容体を介して遺伝子発現に影響を与えること,胎生期不可逆的に生殖系に影響をおよぼす可能性を持つことにある。妊娠時母親のエストロゲンは胎盤―血液関門を通過しないといわれている。しかし,妊娠ラットに経口投与したビスフェノールAは関門を通過し,速やかに胎児へ移行することが明らかになった。われわれは精子形成に重要な役割を果たしているセルトリとライデッヒ細胞を標的にしたアッセイ法を開発しているが,本稿ではライデッヒ細胞に対する内分泌攪乱物質の作用を主に紹介する。ダイオキシンがテストステロン産生能や遺伝子発現などライデッヒ細胞の機能に著しく影響を与えること,また新たにオカダ酸など発がんプロモーターやデイーゼル排気ガスが影響を与えることが明らかになった。

キーワード: 内分泌攪乱化学物質,雄性生殖系,胎盤―血液関門,ライデッヒ細胞,テストステロン合成

廃棄物学会誌,Vol. 10, No.4, pp.271-277, 1999

原稿受付 1999.6.21

* 東京理科大学薬学部衛生化学研究室 教授

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