【論  文】

飛灰構成物質の排ガス中の水銀除去能に関する研究

高 岡 昌 輝*・武 田 信 生*

【要 旨】 ごみ焼却排ガス中の水銀除去機構の一つの因子として,未燃炭素以外の飛灰を構成している無機化合物に水銀を除去する物質があるかどうかを探索し,さらに水銀除去能を有する物質について,条件変化に応じた水銀除去特性および除去機構を明らかにすることを目的とした。未燃炭素を含まないように焼成した飛灰に塩化鉄および亜鉛化合物を5%添加した除去実験の結果,硫化亜鉛が高い水銀除去能を示した。温度の低下とともに除去率は高くなった。X線回折分析により,焼成した飛灰と硫化亜鉛の混合物に捕捉された水銀はその粉粒体表面で黒色硫化水銀として存在することがわかった。想定される除去機構は塩化第二水銀と硫化亜鉛との気固反応であると推測された。この反応の温度依存性については熱力学的検討からも裏付けられた。

キーワード: 水銀,バグフィルター,硫化亜鉛,飛灰,黒色硫化水銀

廃棄物学会論文誌,Vol. 10, No.6, pp.341-350, 1999

原稿受付 1999.2.25

* 京都大学大学院工学研究科環境工学専攻

連絡先:〒606-8501 京都市左京区吉田本町

京都大学大学院工学研究科環境工学専攻  高岡 昌輝