【論  文】

石炭溶融スラグの高温場における硫化水素吸収性能評価

小 澤 祥 二*・丸 山 栄 造**・松 田 仁 樹*・架 谷 昌 信**

【要 旨】 産業廃棄物として排出される石炭溶融スラグに酸性ガス吸収に有用な酸化金属が含まれていることに着目し,高温場での硫化水素ガス吸収性能について実験的検討を行った。その結果,以下の事項が明らかとなった。(1)本実験で用いた石炭溶融スラグはH2Sガス吸収性能を有することが確認された。特に反応の初期段階においては,脱硫反応が速やかに行われることが明らかとなった。(2)石炭溶融スラグを用いた脱硫反応においては,スラグに含まれるFe分がS分を吸収することが明らかとなった。一方,S分吸収性能を有するCa分については,S分との反応を確認できなかった。(3)石炭溶融スラグを脱硫反応に用いた場合,Fe転化率に対してスラグのFe含有量と比表面積が大きな影響をおよぼすことが明らかとなった。(4)雰囲気温度1,123〜1,273Kにおけるスラグの脱硫実験では雰囲気温度の影響によるFe転化率の大きな違いは認められなかった。

キーワード: 石炭溶融スラグ,硫化水素除去,高温乾式脱硫,含有鉄分

廃棄物学会論文誌,Vol. 10, No.6, pp.351-359, 1999

原稿受付 1999.4.19

* 名古屋大学難処理人工物研究センター

** 名古屋大学大学院工学研究科エネルギー理工学専攻

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名古屋大学難処理人工物研究センター  小澤 祥二