【論  文】

光触媒による揮発性有機塩素化合物(テトラクロロエチレン)分解過程における塩素収支

深 水   成*・吉 田 舞 奈*・李   炳 大*・多 久 和 夫**・細 見 正 明*

【要 旨】 揮発性有機塩素化合物であるテトラクロロエチレン(tetrachloroethylene: PCE)で汚染された土壌・地下水の浄化法として,最近,気相光触媒反応法が注目されている。本研究ではPCEガス1,000ppmの回分式光触媒分解実験を行い,分解した際に生成する中間生成物の挙動を確認し,分解過程における塩素収支を明らかにした。中間生成物として,多量のトリクロロアセチルクロリド(TCAC)が認められた。微量にジクロロアセチルクロリド(DCAC),四塩化炭素が生成した。分解過程を通じて,中間生成物であるTCAC,最終生成物である塩化水素を合計した塩素収支で90%以上の塩素挙動を証明できた。TCAC, DCAC,四塩化炭素はすべて3時間で塩化水素に分解した。以上の結果から,PCEの主な分解経路として,PCE→TCAC→塩化水素が考えられた。

キーワード: テトラクロロエチレン(PCE),気相光触媒反応,中間生成物,塩素収支

廃棄物学会論文誌,Vol. 11, No.1, pp.31-37, 2000

原稿受付 1999.7.7

* 東京農工大学工学部 応用化学科

** 水道機工株式会社 研究開発部

連絡先:〒184-8588 東京都小金井市中町2-24-16

東京農工大学工学部応用化学科 細見研究室  細見正明