【論  文】

直流電気抵抗式溶融法による都市ごみ焼却灰・飛灰の溶融処理とプラントのスケールアップ効果

西 野 順 也*・梅 田 十次郎**・鈴 木 俊 行**・田 原 賢 一*・松 澤 克 明*・上 野 俊一朗*・吉 成 直 人**

【要 旨】 

直流電気抵抗式溶融プロセスのパイロット規模(2.4t/D)および実機規模(10t/D)のプラントで4種類の灰を用いて溶融試験を行った結果から,スケールアップに伴う物質収支,熱収支および生成物の環境に対する安全性について検討した。

焼却だけでは廃棄物の完全な無害化処理は難しいが,焼却処理に溶融処理を付加することにより,溶融生成物(スラグ)の溶出性が低減し,かつダイオキシンの排出を非常に少なくでき,廃棄物の無害化処理をより完全なものにできることがスケールアップを行った実証規模プラントでの試験結果からも実証された。焼却灰および飛灰中には有害物質が多いことから排ガス処理が重要であり,乾式および湿式の排ガス処理方法について実験的に検討した。各溶融生成物への成分の移行を両プロセスで比較すると,湿式の方が乾式に比べて排ガスへの移行分が少なかった。Na,Kのアルカリ金属類およびClは乾式の場合溶融飛灰への移行率が高かったが,湿式の場合排水への移行率が高かった。Hg,Pb,Zn,Cdは乾式および湿式とも溶融飛灰あるいはケーキへの移行率が高かった。本溶融プロセスからのダイオキシンの総排出量は溶融炉からの排ガスをすぐに高温加熱する過程を付加することによって3.0μg-TEQ/t-ash未満になり,総合的に排出を抑制できる見通しが得られた。溶融のための炉の消費電力はスケールアップにより向上し,10t/Dの実証規模プラントの場合は680kWh/灰tであった。プロセスの物質収支は,スケールアップに起因する変化はほとんど認められず安定していた。さらなる実機規模(30t/D)へのスケールアップの見通しが得られた。

キーワード: 都市ごみ処理,溶融処理,直流電気抵抗式溶融法,排ガス処理,スケールアップ

廃棄物学会論文誌,Vol. 11, No.3, pp.135-144, 2000

原稿受付 1999.5.17

* 石川島播磨重工業株式会社,機械・プラント開発センター,環境開発部

** 石川島播磨重工業株式会社,環境プラント事業本部,エンジニアリングセンター,第二機器設計部

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石川島播磨重工業株式会社,機械・プラント開発センター,

環境開発部 西野順也