【特集:ダイオキシン類とPCB】

ダイオキシンと性ホルモンとの相互作用

米元純三*・曽根秀子*

【要 旨】ダイオキシンと性ホルモンの相互作用のメカニズムを明らかにする目的で,性ホルモンに支配される組織由来の細胞を用いた実験およびラットにおけるエストロゲン(E2)とTCDDとの相互作用の実験を行った。その結果,子宮内膜がん腫由来の細胞,RL95-2,KLEのTCDDに対する反応の差はエストロゲンレセプターα(ERα)に主に起因し,ERαはAhRを介する遺伝子発現に正の修飾因子として作用することを明らかにした。またラットを用いた実験で,ERがE2の存在下,TCDDによるCYP1A1誘導に関与していることをin vivoではじめて示した。一方,男性ホルモン,アンドロゲンのレセプターを有する前立腺腫瘍由来の細胞においては,TCDDは抗アンドロゲン作用を示し,テストステロンおよびTCDDにより誘導されるシグナル伝達経路において相互に転写を阻害することを示した。

キーワード: ダイオキシン,エストロゲンレセプター,CYP1A1,Ahレセプター,テストステロン

廃棄物学会誌,Vol. 11, No.3, pp.162-172, 2000

原稿受付 2000.4.28

*国立環境研究所 地域環境研究グループ

連絡先:〒305-0053 つくば市小野川16-2 米元純三