【特集:ダイオキシン類とPCB】

日本におけるダイオキシン汚染の原因とその変遷

――除草剤由来のダイオキシン類の寄与――

益 永 茂 樹*

【要 旨】 宍道湖と東京湾の堆積物試料中のダイオキシン類コンジェナー組成の詳細な解析から,水域のダイオキシン類汚染は1960年代から1970年代にかけて最大で,それは除草剤のペンタクロロフェノール(PCP)とクロロニトロフェン(CNP)の不純物に起因していたことを明らかにした。さらに,最近の堆積物中でもそれら過去に使用された除草剤由来の汚染が燃焼由来と同等以上の寄与をしていた。除草剤由来のダイオキシン類は今なお大半が農地に残留し,引き続き流出していると見られた。他方,過去の農薬の分析から,1960年代から1970年代初めに生産されたPCPやCNPは高い毒性等価濃度を持っていたことを明らかにした。以上のことから,現在進められている燃焼排出源対策は,その周辺環境の改善には一定の効果があるが,摂取経路として重要な魚介類汚染に直結する水域汚染の改善効果は短期間では現われ難いことが指摘される。

キーワード: ダイオキシン,農薬,堆積物コア,主成分分析,発生源解析

廃棄物学会誌,Vol. 11, No.3, pp.173-181, 2000

原稿受付 2000.4.17

* 横浜国立大学 環境科学研究センター 教授

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