【特集:ダイオキシン類とPCB】

ダイオキシン類に対する環境政策の動向

中 杉 修 身*

【要 旨】 ダイオキシン類に対する社会的な関心の高まりを受けて,昨年,ダイオキシン類対策特別措置法が制定された。この法律は,環境媒体間を移動し,様々な経路から曝露されるというダイオキシン類の特性にあわせて,大気,水,土壌などを一体に管理するものであり,環境保全に係わるこれまでの法律にない特徴を有している。法律の施行に向けて各種基準の設定や排出抑制対策の検討が行われたが,環境中の挙動を中心としてダイオキシン類に係る科学的知見が不足しており,時間的制約もあったことから,環境媒体間の移動を十分に反映させることができていない。これらの点については,知見の整備を進めて早急に見直しを行う必要がある。しかし,この法律の施行によってダイオキシン類の環境排出量は一層削減されると考えられる。人への曝露を低減するには,水生生物に濃縮されやすいコプラナーPCBの削減を図る必要があり,回収・保管されているPCBの処理がとくに重要となっている。排出削減に続くのが,土壌,底質や最終処分場に蓄積しているダイオキシン類の除去対策であるが,これを実施するには膨大な経費が必要となる。過去のダイオキシン類の曝露量が現在よりも高かったことを踏まえた有害性評価を行うとともに,蓄積しているダイオキシン類がどのようなリスクをもたらすかをサイト毎に評価してから判断する必要がある。

キーワード: ダイオキシン類,コプラナーPCB,環境政策,ダイオキシン類対策特別措置法,環境基準

廃棄物学会誌,Vol. 11, No.3, pp.182-196, 2000

原稿受付 2000.5.1

* 国立環境研究所

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