【特集:ダイオキシン類とPCB】

有機臭素系のダイオキシン類縁化合物

――難燃材料における存在と制御方策を中心に――

酒 井 伸 一*

【要 旨】 ポリ臭化ダイオキシン類(PBDDs/DFs)の物理化学特性,毒性,環境挙動の概要から,難燃剤に含有されるダイオキシン類,焼却過程の溶融過程の挙動について報告し,ポリ臭化ジフェニルエーテル(PBDEs)に関する研究動向と課題を指摘した。これまでの知見からは,ポリ塩化ダイオキシン類(PCDDs/DFs)に比べて環境中の分解は一般に早い傾向を示すものの,毒性的にはより慎重な立場でポリ塩化ダイオキシン類と同等と見るべきとの見解が多い。ポリ臭化ジフェニルエーテルを添加した樹脂に含まれるPBDDs/DFs濃度は総じて高く,ppmレベルであるものが多い。PBDDs/DFsを含む樹脂や廃製品に対して,適正な焼却処理を行った場合,90%程度の分解率は期待できる。一方,焼却や廃ガス処理過程の副生成も考えられる。焼却残渣には依然ダイオキシン類をppmレベルで含むことがあり,こうした残渣や難燃化プラスチックに対しての溶融処理は有効といえる。そして,ヒト母乳でポリ臭化ジフェニルエーテルが急増している事実に鑑み,そのヒトへの曝露経路の特定と制御ポイントの検討が急がれる。

キーワード: ポリ臭化ダイオキシン類,PBDDs/DFs,ポリ臭化ジフェニルエーテル,難燃剤,プラスチック類,焼却,溶融

廃棄物学会誌,Vol. 11, No.3, pp.210-222, 2000

原稿受付 2000.5.15

* 京都大学環境保全センター 助教授

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