【総  説】

廃棄物の産業連関分析

中 村 愼一郎*

【要 旨】 環境との調和を図りながら経済発展を実現する手段として,循環型経済への変換が叫ばれている。循環型経済を設計するためには,財と廃棄物の循環を巡る動脈と静脈の連関関係を定量的に把握することが極めて重要である。産業連関分析は,動脈における財の流れを定量的に把握する手法として開発されてきた。これを廃棄物と財の循環をも把握するべく拡張することが出来れば,上の目的に資する所大であると考えられる。この観点から,産業連関分析とその廃棄物への応用を解説する。産業連関分析の簡単な解説に続いて,レオンチェフの廃棄物モデルとその派生モデルによる分析(二酸化炭素分析,環境統合勘定)を紹介する。続いて,廃棄物に関する物質収支を踏まえた廃棄物産業連関表・モデルを紹介し,その物質フロー分析,生態的足跡分析との関連,および国際産業連関表の活用可能性について述べる。

キーワード: 産業連関分析,廃棄物産業連関表,物質保存則,エントロピー増加則,LCA

廃棄物学会誌,Vol. 11, No.4, pp.289-300, 2000

原稿受付 2000.5.26

* 早稲田大学政治経済学部 教授

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