【特集:有機性廃棄物のリサイクル】
わが国における有機物循環の現状とシステム形成の課題

内 藤 正 明*・楠 部 孝 誠**

【要 旨】 わが国もいま循環社会に向けて急ピッチで動き出した。しかし,これまでに行われてきた各地の循環システムを見る限り,原理的には最も可能性の高いはずの有機物についてさえ,その循環を実現するには様々な障害のあることがわかる。それは単に技術的課題だけでなく,むしろ社会システムにこそ問題のあることを示唆している。
本報は現在のシステムが抱えている課題を様々な事例の中から抽出し,それらを克服し,物理的にも経済的にも成り立つようなシステムを構築するためのヒントを,できるだけ体系的にまとめてみた。また,それを踏まえてこれからの循環形成のヒントとして,「市場事業ネットワーク型」と「非市場コミュニティー型」の両タイプの可能性と,それらが今後の持続可能社会構築において持つ意味を論述した。

キーワード:社会システム,市場事業型,非市場コミュニティー型,持続可能社会

廃棄物学会誌,Vol. 11, No.5, pp.324-331, 2000
原稿受付 2000.7.27
* 京都大学大学院 工学研究科 環境地球工学専攻 教授
** 科学技術振興事業団 研究員
連絡先:〒606-8501 京都市左京区吉田本町 内藤 正明