【論 文】
一般廃棄物最終処分場におけるダイオキシン類の収支
野 馬 幸 生*・松 藤 康 司**・高 田 光 康***・友 田 啓二郎****
【要 旨】 最終処分場におけるダイオキシン類の収支の把握を目的として,一般廃棄物の焼却残渣主体の処分場内とその周辺で調査を行った。焼却灰,飛灰および覆土に含まれるダイオキシン類濃度を測定することにより処分場へ持ち込まれるダイオキシン類の総量を,また浸出水と発生ガスから処分場より排出されるダイオキシン類の総量を,そしてボーリングコアから処分場内に残存しているダイオキシン類の総量を概算した。それらの結果から処分場内でのダイオキシン類の収支を試算した。
処分場へ搬入されたダイオキシン類は8年間で2,900g(46g-TEQ)であり,99%以上が飛灰由来であった。また,環境中へ排出されたダイオキシン類は0.001g(0.000001g-TEQ)であり,浸出水経由であった。搬入されたダイオキシン類の0.0009%(0.0007%,TEQ)である0.02g(0.0003g-TEQ)が浸出水へ移行し,水処理後0.00005%(0.000002%,TEQ)が放流水として環境中に排出されていた。浸出水中のダイオキシン類のほとんどが,水処理過程において汚泥として回収され,再び処分場内へ返送されていた。
今回の調査は限られたデータによる推算であるため不確実性は残るものの,ダイオキシン類が水へ溶解して処分場から排出される量は極めて少なく,また処分場内では容易には分解されず長期にわたり貯留,保管されていると推察した。
キーワード:ダイオキシン類,廃棄物最終処分場,収支,飛灰,ボーリングコア
廃棄物学会論文誌,Vol.11, No.6, pp.297-306, 2000
原稿受付 2000.2.21 原稿受理 2000.8.4
*広島県保険環境センター
**福岡大学工学部
***(財)廃棄物研究財団
****東和科学
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広島県保護環境センター 野馬 幸生