【技術報告】
ごみ中塩素計測法に関する検討
渡 辺 信 久*1・谷 川   昇*2・石 川 千 晶*3・山 本   実*4・前 弘*5・篠 原 明 義*6・松 江   努*7・佐 藤 茂 夫*8・及 川   智*2・河 村 清 史*9
【要 旨】 ごみ中塩素(Cl)分析法の概説を行い,方法間でのデータの差異の事例を示し,それぞれの方法で求められるデータの意味について考察した。分析方法は,大きく分けて,燃焼管法,ボンブ法およびるつぼ燃焼法の3通りがある。実試料を用いて,複数の試験・研究機関で行った実験から,燃焼管法での計測値が,ボンブ法およびるつぼ燃焼法より有意に低い値を与える可能性があることがわかった。燃焼管法が低値を与える理由として,アルカリ(土類)金属(Na, Mg, KおよびCa)の影響が考えられる。生成したアルカリ(土類)金属塩化物は,試料燃焼温度が600℃の時にはボート中の灰にClが残留し,一方,試料燃焼温度が900℃の時にはそれ自体が揮発するものの,燃焼管内壁に吸着し,いずれにしても吸収液まで到達しない。しかし,燃焼管法で吸収液に移行するCl量は,燃焼時のHCl生成量を表しており,揮発(燃焼)性塩素の評価方法として有効である。

キーワード:塩素,都市ごみ,ボンブ法,燃焼管法,エシュカ法
廃棄物学会誌,Vol. 12, No.1, pp.60-66, 2001
原稿受付 2000.10.16
*1 大阪市立環境科学研究所
*2 東京都清掃研究所(現 東京都環境科学研究所廃棄物研究室)
*3 仙台市環境局 施設部施設課
*4 横浜市環境事業局 廃棄物資源開発室
*5 (株)大阪化学分析センター
*6 太平洋セメント(株) 研究本部佐倉研究所
*7 (株)島津テクノリサーチ 分析部
*8 日本工業大学機械工学科
*9 埼玉県環境科学国際センター
連絡先:〒543-0026 大阪市天王寺区東上町8-34
大阪市立環境科学研究所環境工学課  渡辺 信久