X線光電子分光分析による飛灰表面上の亜鉛,鉛,銅の化学形態の推定
高 岡 昌 輝*・蔵 本 康 宏**・武 田 信 生*・藤 原 健 史*

【要 旨】 20種の焼却飛灰および5種の溶融飛灰上の亜鉛,鉛,銅の化学形態を推定するため,X線光電子分光分析を行った。飛灰と試薬のZn2p3/2, Pb4f7/2, Cu2p3/2束縛エネルギーの比較から,亜鉛は飛灰最表面では2ZnCO3・3Zn(OH)2で,内部ではZnやZnOで存在すると推定された。鉛は飛灰最表面ではPbCO3, PbCl2で存在するものが多く,内部では排ガス処理方式により存在形態がわかれた。銅は飛灰の種類や深さ方向であまり変化がなく,CuO, CuCl, Cu, Cu2Oで存在することが推定された。溶融飛灰ではほとんどの試料で1価銅もしくは銅単体で存在することが推定された。いずれにおいてもCuCl2の形態で存在するとはいえなかった。ESCAによる深さ方向の分析では,亜鉛,鉛に関しては焼却飛灰,溶融飛灰ともに表面に濃縮している傾向が見られたが,銅の表面濃縮は顕著でなかった。

キーワード:亜鉛,銅,鉛,飛灰,X線光電子分光分析

廃棄物学会論文誌,Vol. 12, No.3, pp.102-111, 2001
原稿受付 2000.10.5  原稿受理 2001.2.13

* 京都大学大学院工学研究科環境工学専攻
** (株)システム環境計画コンサルタント
連絡先:〒606-8501 京都市左京区吉田本町 京都大学工学研究科環境工学専攻 高岡 昌輝