廃棄物埋立地層内における重金属の溶出性の評価
黒 川 岳 司*・小 松 登志子**・福 島 武 彦**
【要 旨】 都市ごみ焼却残渣は有害重金属を含有しているが,現状では焼却残渣埋立地からの重金属の流出は少なく,その原因は明らかでない。そこで,埋立地層内における重金属の溶出性を評価するために,重金属の挙動として水酸化物沈殿や硫酸塩還元菌による金属硫化物生成などに着目して,各種溶出実験や埋立層内模擬実験を行い,化学平衡論的な考察も加えた。焼却残渣主体の埋立地層内の準好気性および嫌気性領域を想定した本実験条件ではいずれにおいても,硫酸塩還元反応が起こるための条件は整い難く,硫化物生成による重金属固定は生じなかった。しかし,不溶化原因として,水酸化物などの沈殿以外にもCaとの共沈,錯体形成による焼却灰との結合などが起こっていることが確認できた。
キーワード:焼却灰,重金属,不溶化,硫酸塩還元反応,沈殿
廃棄物学会論文誌,Vol.12,No.5,pp.209-218,2001
原稿受付 2000.8.25
*呉工業高等専門学校環境都市工学科
**広島大学大学院工学研究科
連絡先:〒737-8506 広島県呉市阿賀南2-2-11
呉工業高等専門学校環境都市工学科 黒川 岳司