ヘキサクロロベンゼン(HCB)の環境排出とその発生源
酒 井 伸 一*・平 井 康 宏**・高 月   紘**
【要 旨】 ヘキサクロロベンゼン(HCB)の環境排出とその発生源について既存の知見をレビューした。HCBは,2001年に成立した残留性有機汚染物質(POPs)に関するストックホルム条約において,規制対象物質の一つにあげられており,強い環境残留性と高い環境移動性を有する物質である。その主たる環境排出発生源は,次の6種に分けられる。すなわち,1)製品としてのHCBそのもの,2)農薬中の不純物,3)塩素系有機溶媒製造過程での副生成物,4)ごみ焼却,5)金属精錬,6)その他の産業からのHCB発生,である。最近の見積もりによる世界の全排出量は,年間10-100tonである。また,日本の経時的排出量の見積り結果についても報告した。
キーワード:ヘキサクロロベンゼン,HCB,残留性有機汚染物質,POPs,発生源,インベントリー
廃棄物学会誌,Vol.12,No.6,pp.349-362,2001
原稿受付 2001.10.20
*国立環境研究所循環型社会形成推進・廃棄物研究センター
**京都大学環境保全センター
連絡先:〒305-8506 つくば市小野川16-2
国立環境研究所循環型社会形成推進・
廃棄物研究センター 酒井 伸一