【小特集:廃棄物の焼却溶融処理における材料問題】
溶融炉用耐火物の現状と課題
山 口 明 良*

【要 旨】 産業廃棄物や都市ごみの焼却処分に際し,ダイオキシンなど環境ホルモンが発生するという問題が生じ,これを解決するため,約1,300℃以上の高温で溶融するガス化溶融炉などが開発された。廃棄物・ごみには,CaO, Na2O, K2Oなどが含まれ高温で溶融されるので,炉内内張り耐火物は苛酷な侵食作用を受け,まだ十分なものでなく,一層優れた耐火物が求められている。現今では,Al2O3-Cr2O3系のような酸化クロム含有耐火物が,最も多く使用されており,種々の耐火物の中では,優れた耐食性を有する耐火物であるが,反面,操業中に溶融スラグと反応し,6価クロム化合物を生成し易いという問題がある。本稿では,さらに優れた耐火物開発の基礎として,主にクロム系耐火物の問題を取り上げ,クロム含有耐火物の耐食性に優れる理由,6価クロムを生成する条件,6価クロム生成を抑制する方法,クロム含有耐火物を使用しないとすれば,どのような耐火物があり得るかなどを述べている。

キーワード:溶融炉,酸化クロム系耐火物,6価クロム
廃棄物学会誌,Vol.13,No.1,pp.47-53,2002
原稿受付 2001.10.25
*名古屋工業大学・教授
連絡先:〒466-8555 名古屋市昭和区御器所町
名古屋工業大学・材料工学科