消費者の購買行動による有機物の循環促進の可能性
椹 木 秀 作*・楠 部 孝 誠**・内 藤 正 明*
【要 旨】 有機物の循環推進は現代社会において達成すべき大きな課題の1つである。本研究では有機農産物に注目し,消費者によるグリーンコンシュームが循環形成にどれだけのドライビング・フォースとなりうるか,その可能性を経済的なコスト分析により評価した。その手法としてCVMによるアンケート調査とともに販売実験を行い,有機農産物に対する消費者の支払意志額を抽出した。結果は市場流通農産物に対して,アンケートでは+26.6%,販売実験では+14.9%であり,意識と行動にかなりの乖離が見られた。現在は市場流通農産物に対して実際の有機農産物のコストは32.3%高くつくので,これらの結果からグリーンコンシュームは循環形成の1つのキーになりうる可能性はあるものの,循環を定着させるには,さらにリサイクルコストの公平配分や流通体系の変革などを盛り込んだ,新しい社会構造の創出が必要であると考えられる。
キーワード:有機物循環,有機農産物,グリーンコンシューム,CVM,販売実験
廃棄物学会論文誌,Vol.13,No.2,pp.71-78,2002
原稿受付 2001.4.10
*京都大学大学院工学研究科環境地球工学専攻
**科学技術振興事業団
連絡先:〒606-8501 京都市左京区吉田本町
京都大学大学院工学研究科環境地球工学専攻 椹木 秀作