【論 文】
超臨界水中でのNaOH添加による熱分解槽と酸化反応槽との組合せプロセスでの2-クロロフェノールの分解
李   根 喜*・布 浦 鉄 兵*・松 村 幸 彦**・山 本 和 夫***

【要 旨】 超臨界水酸化法(SCWO)で有機塩素化合物を処理する場合,塩化物イオンが生成し,この塩化物イオンが酸素と共存するとより激しい反応器の腐食が起こり,また,塩素が付加しているフラン,ダイオキシンなども生成する可能性がある。そこで,本研究では超臨界水酸化法での塩化物イオンと酸素の共存により促進される反応器の腐食と有害な物質の生成を抑制するため,超臨界水酸化反応の前処理として脱塩素のための熱分解槽を導入する組合せプロセスを検討した。反応物質としては2-クロロフェノール(2CP)を選択し,また,脱塩素反応を促進するため,超臨界水酸化法で反応後生成する酸の中和のため使われているNaOHを用いた。
実験の結果,前処理しないSCWOプロセスに比べ,本研究で提案した組合せプロセスのほうでより高い2CPの分解率が得られた。また,中間生成物としては前処理しないSCWOプロセスではクロロジベンゾダイオキシン,ジクロロフェノキシフェノールなどの二量体が検出されたが,本研究で提案した組合せプロセスでは,二量体はほぼ検出されず,SCWOプロセスとは異なるフェノール,クレゾールなどの中間生成物が検出された。こうした2CPの分解率と中間生成物についての結果から,組合せプロセスが超臨界水酸化法の問題点を解決する一つの方法であることを示した。

キーワード:超臨界水酸化法,2-クロロフェノール,水酸化ナトリウム,熱分解,ダイオキシン類
廃棄物学会論文誌,Vol.13,No.2,pp.89-98,2002
原稿受付 2000.12.4
*釜山市庁環境政策課
**広島大学大学院工学研究科
***東京大学環境安全研究センター
連絡先:大韓民国釜山市蓮堤区蓮山洞1000
釜山市庁環境政策課 李 根喜