【要 旨】 廃棄物埋立地における廃棄物の分解と安定化のメカニズムを知ることは,廃棄物埋立地を正しく評価するために極めて重要である。ここでは,分解・安定化に大きな役割を果たしていると考えられている硫酸塩還元菌とメタン生成菌に焦点を絞り,これらの分布と構造について分子生物学的手法を用いて研究した結果を述べる。これまで,その微生物学的知見は培養法によるものが大半であったが,1990年代より様々な環境を理解するために分子生物学的手法が適用され,多くの知見が得られはじめた。主な方法としては定量的PCR,クローニング解析,DGGE, RFLP, TRFLP,スロットブロットDNA(RNA)ハイブリダイゼーション,FISHがある。これらを概説し,定量的PCRとクローニング解析の応用例を示した。その結果,硫酸塩還元菌の存在量は全細菌の約15-30%であること,メタン生成菌は約2-3%であることがわかった。さらに,クロルベンゼン等の有機塩素化合物を脱塩素化することで知られているDesulfomonile属が多数検出され,廃棄物埋立地における有機塩素化合物の分解を説明できる結果を得た。
キーワード:埋立処分地,メタン生成菌,硫酸塩還元菌,分子生物学的手法
廃棄物学会論文誌,Vol. 13, No.3, pp.113-123, 2002
原稿受付 2001.7.26 原稿受理 2002.2.1
* 岐阜大学農学部生物資源利用学科
*† 現在 産業技術総合研究所 生物遺伝子資源研究部門 生物資源情報基盤研究グループ
連絡先:〒501-1193 岐阜市柳戸1の1
岐阜大学農学部 高見澤一裕