【特集:合意形成】
環境アセスメントと住民合意形成
原科 幸彦*

【要 旨】 わが国の環境アセスメントは計画の合意形成とは切り離されていたが,1997年の環境影響評価法の制定により,アセス結果が事業計画の意思決定に反映されるようになった。アセス結果には住民意見が反映されるから事業計画にも住民意見が影響を与えることになる。しかし,アセスは合意形成の支援はできても合意形成そのものを達成することは難しい。アセスにより主体間で情報の共有は図られるが,合意形成のために必要な関係主体間の継続的な「議論」の場は,アセスとは別の場として設定されるべきである。この場には,多様なステークホルダーが参加して対等な立場で透明なプロセスで議論を行うことが必要である。わが国でもアセスが次第に定着し情報共有が進むとともに,そのような場が作られてきた。たとえば,最新の事例として廃棄物処理施設計画の合意形成のために設けられた長野県・中信地区の検討委員会の例がある。本稿では,この場における合意形成プロセスについて紹介する。

キーワード:環境アセスメント,合意形成,住民参加,廃棄物紛争,ステークホルダー
廃棄物学会誌,Vol. 13, No.3, pp.151-160, 2002
原稿受付 2002.5.17
* 東京工業大学大学院総合理工学研究科・教授
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