【論文】
燃焼過程におけるダイオキシン類生成に及ぼす塩素源・塩素形態の影響
川端 弘俊*・碓井 建夫*・丸川 雄浄**・原 茂太*・中里 英樹*・田中 敏宏*

【要 旨】 ダイオキシン類は有機塩素化合物であることから,燃焼物中の塩素源およびその形態がダイオキシン類生成濃度に大きく影響する重要な因子になると考えられる。そこで本研究では,主として高温における燃焼実験および熱力学的平衡計算から,ダイオキシン類生成濃度に及ぼす燃焼過程における有機塩素,無機塩素などの塩素源およびその塩素形態の影響を実験室規模の燃焼炉を用いて調査した。
ダイオキシン類を構成する4元素が存在すると,800℃という高温燃焼においてもダイオキシン類は生成する。また,燃焼物中の塩素源および塩素形態が同一である場合,塩素濃度とダイオキシン類生成濃度はほぼ比例し,燃焼物質中の塩素源が有機塩素化合物か熱力学的に安定な無機塩素化合物かによりダイオキシン類生成濃度は大きく異なる。さらに,無機塩素化合物でも,その塩素形態すなわち水和物などの活性なClが存在すると高濃度のダイオキシン類が生成することを,小麦粉と塩との水和物の燃焼実験により明らかにした。

キーワード:塩素源,塩素形態,水和物,ダイオキシン/フラン,ダイオキシン類生成モデル
廃棄物学会論文誌,Vol. 13, No.4, pp.184-192, 2002
原稿受付 2001.9.14
* 大阪大学大学院 工学研究科
** 大阪大学 先端科学技術共同研究センター
連絡先:〒565-0871 吹田市山田丘2-1
大阪大学大学院工学研究科 マテリアル応用工学 川端 弘俊