【特集:使用済自動車】
自動車リサイクル法の制度と課題
大塚 直*

【要 旨】 自動車リサイクル法は,費用徴収に関して次の3つの問題を孕んでいる。(1)ユーザーが金銭的支払責任を負うため,Design for Environmentに結びつきにくいこと,(2)お金の流れが悪く,10年間で1兆円程度が滞留すること,(3)既販車について車と費用支払いの1対1対応を図ろうとするため,チェックのための行政コストが相当程度かかることである。これらを解決する方法としては,第1に,拡大生産者責任を強化する(金銭的支払責任まで製造業者等に認める)方式,第2に,既販車についてはリサイクル費用を徴収せず,新車から徴収した費用によって既販車をリサイクルする方式(「年金方式」)があるが,拡大生産者責任の目的からは,第1の方式が適当であったと考えられる。
本法は,一言でいえば,製造業者等に環境負荷低減の経済的インセンティヴを与えることまではしないが,3品目について法的にリサイクル,回収を義務づけたのであり,規制的な色彩が強い。第1段階に留まった法律といえよう。第2段階としては,いわゆる内部化が必要となるが,本法は第1段階にとどめたということである。

キーワード:拡大生産者責任(EPR),自動車リサイクル法,汚染者負担原則,自車充当
廃棄物学会誌,Vol. 13, No.4 pp.193-199, 2002
原稿受付 2001.7.5
* 早稲田大学法学部教授
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