【特集:使用済自動車】
自動車リサイクルにおけるドイツの状況
寺園 淳*

【要 旨】 EUでは年間900万台程度の使用済自動車が発生し,25%程度は埋立処分されているといわれている。ドイツでは年間350万台程度の自動車が抹消されているが,国内での解体は110〜170万台に過ぎず,多くは周辺諸国へ輸出されている。
ドイツには廃車政令と自主規制が存在していたが,2000年9月に採択されたEUのELV(使用済自動車)指令の発効を受けて,2002年5月に新たな廃車法が成立した。これによって,自主規制では使用
済自動車の無償引取が車令12年未満のものに限られていたものが,生産者責任が拡大され,すべての使用済自動車が対象となった。リサイクル率の数値目標や有害物質規制が制定され,解体証明書制度も一部改正された。
また,リサイクル率向上のために,リサイクル型設計やシュレッダーダスト(ASR)のリサイクル方法
開発などの取り組みが行われている。しかしながら,エネルギー回収に制限があるために目標達成は容易でないとみられる。

キーワード:EUのELV指令,ドイツ廃車法,自動車リサイクル,無償引取,リサイクル率
廃棄物学会誌,Vol. 13, No.4, pp.210-220, 2002
原稿受付 2002.6.26
* 独立行政法人 国立環境研究所・主任研究員
連絡先:〒305-8506 茨城県つくば市小野川16-2